不妊症・生理痛・生理不順

不妊症・生理痛・生理不順について

不妊を訴える方はホルモン治療から体外受精まで多くの治療をしています。

しかし、体外受精をしても受精卵の着床の確率が低いことは、子宮粘膜の状態が受精卵の成長に重要な役割を果たしていることを意味します。

すなわち、子宮粘膜における粘液分泌が、子宮内環境の保持に重要な役割を担っていますからそれを支配する自律神経機能を管理することが大切です。

反応点治療では、子宮や卵巣の反応点を刺激して生殖器の働きを高めます。また、生殖器を支配する自律神経機能を調整します。

また、ふらつき・つまずきなど運動障害(バランス障害)や嘔吐や冷や汗など自律神経症状を呈します。

腰部・下腹部痛を伴った子宮筋腫の1症例

症例

51歳 女性

主訴

腰痛・下腹部痛

現病歴

昨年1月および4月に大量の不正出血と腰痛・下腹部痛が出現

既往歴

(1)平成18年5月より生理不順(生理周期が3ヵ月~6ヵ月)、めまい、肩こり、腰痛などにより当治療院にて加療
(2)平成23年10月 高度な貧血(Hb7.0g/dl)により鉄剤投与
(3)平成24年6月 甲状腺ガンの手術(頸部に著名な反応点あり)

治療経過1

  • 平成18年5月
    反応点は内耳、咽喉、肝、膀胱、子宮、卵巣を週一回の治療を行った。治療開始6ヵ月後には生理周期は28日~30日周期に改善した。
  • 平成23年4月ごろより生理時の大量出血と生理痛が増大した。反応点は婦人科領域が顕著に出現、週2回の治療を行い痛みのコントロールを行った。貧血の治療に関しては薬物療法と食事療法にて改善した。
  • *上記の治療により痛みと貧血が改善したため、治療は週一回にした。

治療経過2

平成24年当初から頸部に反応を指摘、患者から咽喉の閉塞感の訴えがあったが経過観察した。
その後、咽喉の反応点が顕著になり精密検査をすすめ、同年5月に頸部超音波検査にて甲状腺に占拠性病変(同時に病理検査も行ったFig1)が認めら れ病理学的検査にて甲状腺ガンと診断された。
同年6月に甲状腺の全摘手術を施行、以降、モルモン剤を投与している。

平成26年1月頃から婦人科領域の反応が改善せず、常時腰痛・下腹部痛も出現。
生理時の圧迫感が増大(触診による圧を加えると腫瘤を感)。

同年4月に経子宮の超音波検査を行ったところ、子宮筋腫(Fig2)が5個(最大8.0cm)、左右の卵巣嚢腫(最大6.0cm Fig3)が認めらた。

子宮筋腫について

発生率 30歳以上で20%~30%(悪性0.5%)
30歳~40歳に好発
発生 子宮の粘膜下、筋層、漿膜下
単発性<多発性(60%~70%)
性質 ホルモン依存性(エストロゲン)
閉経後→縮小
その他エストロゲン依存性の疾患
(乳腺症、乳がん、内膜症、腺筋症 etc)
主な症状 不正出血、月経痛、月経困難症、貧血、流産・不妊症など
周辺臓器への影響 (筋腫の巨大化)
膀胱(尿管も含む)、直腸:水腎症、排尿障害、便秘、腰痛
治療法 (1)対症療法
増血剤、止血剤、消炎鎮痛剤などで症状緩和。漢方薬、経口避妊薬などで月経量や月経痛の緩和

(2)ホルモン抑制剤
偽閉経療法により筋腫を縮小

(3)手術
全摘術、筋腫核出術、子宮鏡下摘出術、子宮動脈塞栓術

本症例の治療方針

(1)痛みに対して・・・鍼灸治療(痛みのコントロール)

(2)貧血に対して・・・薬剤療法(鉄剤)、食事療法

(3)子宮筋腫に対して・・・非手術

ホルモン(LH-RH)抑制剤(商品名:リュープリン)
視床下部から分泌されるLH-RHを抑制する

下垂体前葉からの分泌されるLHが減少

強制的に閉経状態(更年期症状 +)
*副作用30%出現
うつ状態、関節痛、ほてり、めまい等

治療結果

  • 痛みに対しては鍼灸治療によりコントロールできた。
  • 子宮筋腫に対してはホルモン抑制剤が効を奏した。
    しかしながら、ホルモン抑制剤は患者個々の状態により使用が限られる。
  • *平成26年5月より薬剤投与開始(4週/1回)6カ月投与
  • *投与開始後3ヵ月 生理(-)、経過が良好
  • *治療期間中には不正出血は(-)

考察およびまとめ

  • 本症例の痛み(腰痛・下腹部痛)は子宮筋腫、卵巣嚢腫が巨大化したことにより周辺臓器を圧迫し痛みを生じたことと推察した。疾患対する鍼灸治療は本質的な治療ではなかったが、鍼灸治療により鎮痛効果は認められ、施術することで患者のQOLは向上できた。
  • 子宮筋腫の治療はホルモン抑制剤を投与することで治療効果が認められた。